5/18トークイベント第5弾「聴いてもらう」というセルフケア——親子の未来のために

リスママ寄付キャンペーントークライブ第5弾レポート
2026年5月18日に開催された、リスニングママ・プロジェクト寄付キャンペーントークライブ。
今回のゲストは、NPO法人シングルマザーズシスターフッド代表・吉岡マコさん。
「聴いてもらうことは、なぜセルフケアになるのか?」 「自分の気持ちを言葉にできることは、親子関係にどんな影響を与えるのか?」
シングルマザー支援の現場で感じていること、言葉を磨きながら自分自身を見つけ直していくプロセスについて,リスママ発起人の高橋ライチと語り合いました。
「母となった女性が、自分らしく生きる」を支えてきた
ライチ: 今日は、リスニングママ・プロジェクト寄付キャンペーントークライブにお越しくださってありがとうございます。
今回のテーマは、 「聴いてもらう」というセルフケア——親子の未来のために。
ゲストに、NPO法人シングルマザーズシスターフッド代表の吉岡マコさんをお迎えしています。
今日は、「誰かに聴いてもらう」ということが、なぜセルフケアになるのか。
そして、そのことが親子関係や子どもの未来にどうつながっていくのかを、一緒にお話できたらと思っています。
まずはマコさん、簡単に自己紹介をお願いできますか?
マコ: はい。皆さんこんにちは。吉岡マコと申します。
現在は、シングルマザーズシスターフッドという、ひとり親支援の団体を運営しています。活動は今6年目になります。
この活動を始める前は、「マドレボニータ」という産後ケアの団体で、産後のフィットネスプログラムを開発・普及する活動を22年間やっていました。
「マドレボニータ」はスペイン語で「美しい母」という意味です。
私自身の出産が1998年だったんですけれど、その時に「産後ケア、本当に必要なのに、全然ない」と痛感して、25歳の時に活動を始めました。
息子が大学を卒業したタイミングで、私自身も子育てのステージを終えたということで、自分で立ち上げたマドレボニータを次のリーダーにバトンタッチしました。
その直後から、今度はシングルマザーズシスターフッドの活動を始めています。
だから私のキャリアはずっと、「母となった女性が、心身ともに健康と力を取り戻し、自分らしく生きること」を支えることを続けていると自負しています。
「交流」が目的ではなく、「自分に向き合う」が目的
ライチ: シングルマザーズシスターフッドさんでは、寄付キャンペーンでエッセイを書く取り組みをされていますよね。
自分の言葉で、自分のことを語ることをとても大切にされている印象があります。
セルフケア講座でも、対話の時間を取っているんですか?
マコ: そうですね。
ただ、実はセルフケア講座とエッセイライティングのプログラムは、かなりその目的や内容を明確に分けているんです。
セルフケア講座では、ストレッチと瞑想を25分やったあと、一人30秒くらいで、自分の体と心の状態を振り返って言葉にする時間を取っています。
でも、目的は「対話」ではないんですね。
あくまで、「自分の状態を振り返ること」が目的なんです。
アンケートでは「もっと交流したかった」という声もあるんですが、私たちは、この講座ではそのニーズには応えないと決めています。
ストレッチや瞑想って、まずは自分に向き合う作業なんですよね。
ただやって終わるんじゃなくて、その後に「今、自分の体や心はどんな状態なんだろう?」と立ち止まって振り返り、それを言語化する。
そうすることで、セルフケアの効果が高まるんです。
でも、その振り返りを一人でやるんじゃなくて、「30秒でも聴いてくれる他者がいる」ということに意味があります。
まずは自分に向き合う習慣ができる。
すると、「もっと自己探求したい」「他のシングルマザーはどんな人なんだろう」と興味が湧いて、他者との交流にも意欲が出てくる。
そういうステップがあるんです。
「ママ友を作らなきゃ」の前に、自分に戻る時間
ライチ: 確かに、「他者と交流しなきゃ」「ママ友作らなきゃ」みたいな交流って、どうしても自分を置いていく感じがあると思うんです。
周りに合わせたり、浮かないようにしたり、嫌われないようにしたり。
でも、「今、自分の体はどうなってるかな」「心はどう変化してるかな」って、自分を観察する機会って、なかなかないですよね。
マコ: そうなんです。
実際、セルフケア講座のアンケートでも、「無理に交流しなくていいのがいい」という声が実は、すごく多いんですよ。
やっぱり参加する目的って、自分に向き合いたいとか、自分の体を整えたいとか、自分にフォーカスしたいからなんですよね。
なのに、他の参加者に気を遣ったり、そこにエネルギーを使うのはもったいない。
だから、あえて他者と話す時間は「一人30秒」。
自分に向き合う習慣がついて、自分らしさがわかった上で、「誰かとつながりたい」と思う、そういう段階を踏むのが本当は自然なんだと思います。
今って、「つながり礼賛主義」みたいなところがあるじゃないですか。
孤立させないように、つながりを促すことが尊いことのように言われる。
でも、それは深いつながりである必要はなくて。あえて深くつながらない、ゆるやかなつながりでいい場合もある。
顔を見ながら一緒にストレッチするだけでも、意味あるシスターフッドのあり方だと思っています。
「20分、ただ聴いてもらう」時間が生むもの
ライチ: リスママでは、オンラインで20分、お話を聴く時間「おはなしDAY 」を無料で提供しています。
それってまさに、「周りに合わせて、自分がどう感じているかわからなくなった時」に、自分自身がどうしたいかを、静かに落ち着いて考えられる時間なんです。
聴き手は、意見を言わないし、アドバイスもしません。
「あなたはどうしたい?」に耳を傾ける。
マコさんの話を聴いていて、おはなしDAYは「30秒をただ聴いてくれる」の20分版みたいだなと思いました。
毎日、「何が正解か」「何が子どもにとって一番いいか」「失敗しない選択は何か」というプレッシャーの中で選択しているお母さんたちにとって、自分に向き合う時間や、他の人も同じように自分に向き合っている存在を感じられることって、すごく大切ですよね。
マコ: そうですね。
あと最近、「話聞くよ」ってみんな気軽に言うじゃないですか。
でも、実際には、話を聞くスキルがないまま、自分の意見を言ってたりもしますよね。
実は、「聴く」って、すごくスキルがいることだと思うんです。
だから、リスママみたいに、ちゃんとトレーニングを受けた人が、共感的に聴く場を提供しているのは、一つの希望だなと思っています。
「本音」は、話しているうちに見つかる
ライチ: そうなんです。
友達や家族は、どうしても力になりたいから、アドバイスしたくなったり、励ましたり、こちらの感情を変えようとしてしまう。
だから、利害関係のない、聴くトレーニングを受けた人が、ただ聴いてくれる場って、本当に貴重なんですよね。
そして、自分が感じていることを、自分自身もまだ発見できていないことがあるんです。
話しているうちに、「あ、私こんなに怒ってたんだ」とか、「本当はこれを大事にしたかったんだ」って、本音に出会う瞬間がある。
その瞬間が、とても美しいんですよ。
聴き手としても、そこに立ち会えることが感動的で。
だから、皆さんボランティアで時間を提供してくださっているんです。
マコ: 本当にそうですよね。
ニュートラルな存在として共感的に聴いてもらうことで、自分自身の解像度が上がっていくんですよね。
感情って、「この辺にもやもやあるけど、名前をつけたことがない」人の方が多いと思うんです。
ましてや、「その感情の背後で、自分は何を大切にしたいのか」なんて、考えたこともない人が多い。
だから、適切な場で、適切な問いをもらうことで、そこに思いを馳せるし、それを考え、語ることで、自分の輪郭がはっきりしてくる。
そういう効果はすごくありますよね。
「笑顔のお母さん」でいようとして、爆発する
ライチ: 解像度が上がると、解決法も見えてくると思うんです。
「お母さんは笑顔でいなくちゃ」って、表面的に笑顔を作っていても、心では怒っていたりすると、あるときどこかで爆発してしまう。
でも、「私、本当はみんなに協力してほしかったんだ」とわかれば、「じゃあ一緒に仕組みを考えよう」と次の選択肢が生まれる。
解像度が低いまま、「いいお母さんでいなきゃ」と取り繕ってしまうことで、苦しくなることってありますよね。
マコ: ありますよね。
自分のことがよくわかっていない状態だと、自分じゃないもの——社会の価値観や「こうあるべき」を、自分のものだと勘違いしてしまう。
それって、支援する側にも責任があると思うんです。
例えば、「子育て大変ですよね」「不安に押しつぶされそうになりますよね」って、先回りして言葉を渡してしまう。
そうすると、「あ、そうなんです」って、その人自身の感情を深く見ないまま、その言葉を自分のものだと思ってしまう。
私、シングルマザー支援を始めた頃、みんながすごく似た言葉を使っていることに気づいたんです。
「押しつぶされそう」とか、「どん底」とか。
それって、一人親支援の文脈で、よく使われている言葉なんですよね。その人の内側から出てきた言葉ではないというのは、直感でわかります。
だから、エッセイライティングでは、「本当にこの表現でいいですか?」というやりとりが何度もされるんです。
よくある言葉ではなく、「その人が、本当に感じたこと」を言葉にしていく。
そのプロセスを大事にしています。
「あなたはどう感じてる?」と聞かれてこなかった
ライチ: 本当に、自分の感情を言葉にするって、慣れていないと難しいですよね。
聴き方の講座をしていても、「私たち、聴かれてこなかったんだな」と感じます。
「あなたはどう感じてる?」 「本当はどうしたい?」
そんなふうに、ゆっくり聴いてもらえる機会が少ない。
でも、大人が自分の気持ちを聴いてもらえると、今度は目の前の子どもに対しても、「どうしたの?」って、その子の気持ちに耳を傾けられるようになると思うんです。
だから、お母さんが聴いてもらえることで、その周りの子どもたちも聴いてもらえる。
そんな連鎖が起きるんじゃないかなと思っています。
「感情のセルフケア」が、親子関係を変えていく
ライチ: やっぱり、感情のセルフケアができていると、つながりを作るにしても、問題を解決するにしても、落ち着いて向き合えると思うんです。
子どもでも、感情のケアができないから、パニックを起こしたり、暴れたり、物を壊したり、「もうやらない!」って投げ出してしまったりします。
それで終わると、成長につながっていかないですよね。
マコ: そうですね。
そうすると、余計に人を遠ざけてしまったりもしますよね。
ライチ: そうそう。
「人付き合い苦手なんです」っていう言葉で、自分を覆ってしまって、人と関わること自体を諦めてしまうこともある。
でも、聴いてもらうことで、「自分は本当はどうしたいのか」「何を望んでいるのか」が言葉にできるようになると、人と健全につながれるようになると思うんです。
マコ: 本当にそうですね。
エッセイを書くことは、「自分の人生を尊厳ある物語にする」こと
ライチ: 実際に、セルフケア講座やエッセイライティングを通して、どんな変化が起きていますか?
マコ: エッセイライティングでは、1500文字くらいの短いエッセイを完成させるのに、1ヶ月くらいかけます。
読むのは2分もかからない文章なんですけど、構成者と執筆者が何往復もやり取りをして、何度も書き直すんです。
段落ごと削除することもあるし、気持ちをもっと掘り下げて、言葉を足すこともある。
たとえば離婚の顛末について自己開示したときに、それが雑談だと「大変だったね」で終わってしまったり、そのストーリーがゴシップ的に消費されてしまうこともあります。
でも、その物語をエッセイとして磨き上げると、その人のかけがえのない人生の結晶みたいなものになるんです。
簡単には消費できない。
「お気の毒に」「悲惨だね」といった表面的なリアクションではなく、尊敬やリスペクトを持って読まれる。
今って、ショート動画や短い投稿など、一口サイズの情報がどんどん流れてくる時代じゃないですか。
だからこれは、そういうトレンドとは真逆の取り組みで、一人の人生を、言葉を慎重に選びながらエッセイにして、それを一つの作品として丁寧に仕上げる。
そして、それを仲間たちが読んで、「あの人には、こんなストーリーがあったんだ」と知って、リスペクトの気持ちを持つ。そういうやり取りが、すごく尊いなと思っています。
そうやって心を動かされた人の中には、さらにそのエッセイを誰かに紹介したり、広めたりする人も出てきます。そこまで行くと、もう、「支援される側」ではなく、「一人の誇り高き市民」の行動ですよね。
「その人らしい言葉」を探し続ける
ライチ: 校正者の方も、シングルマザーなんですよね。
その人らしさが出ているかを問い続けながら、一緒に言葉を磨いていく。
マコ: そうなんです。
一人の執筆者に対して、二人の校正者がつきます。
執筆者は、自分の書いた文章を客観視しにくいので、校正者が、「ここ、時系列が分かりにくいから、こんなふうに構成したらどうかな」とか、「ここは大切なところだと思うので、もっと気持ちを聴いてみたい」と提案したり、問いかけたりします。
それに対して、執筆者がまた書き直す。
校正者が「こういう表現はどう?」と提案した時に、「確かにそうですね!」とその提案を採用することもあるし、「いや、私はあえてこう表現したい」と返すこともある。
そうやって何度もやり取りする中で、「私が本当に表現したかったこと」が見えてくるんです。
本当にその人らしい言葉が、紡がれていく。
ライチ: 今のお話、おはなしDAYで聴き手がやっていることとすごく似ているなと思いました。
まだ言葉になっていない感情を、「こんな気持ちですか?」と差し出してみる。
そうすると、「そうそう!」となる時もあれば、「いや、というよりは、こうなんです」と、その人自身の言葉が引き出されてくる。
「聴く」を学んだ人たちが、誰かの人生を支えている
マコ: ちなみに、校正者も執筆者も、全員ライチさんの講座を受けているんですよ。
感情をどう扱うか。 その感情の背後で、その人が何を大切にしているのか。そういう視点を学んだことが、校正のプロセスにも活かされています。
ライチ: それを聴いて、本当にうれしいです。
何年にもわたってシングルマザーズシスターフッドさんでコミュニケーション講座を担当させていただきました。そこで学ばれた皆さんが、自分の感情や本当に望んでいることに向き合ってこられ、
そして今度は、仲間がそこに向き合うためのサポートをしている。
マコ: このプロジェクトって、みんな対等なところがいいんです。
校正者は、「執筆に挑戦している仲間を応援したい」という気持ちだけでやっているから、変な利害関係もないし、上下関係もないんですね。
だから執筆者も、「自分以上に、このエッセイを大切にしてくれている」と感じる瞬間があったりするんです。
一人で書いているというより、「一緒に作っている」感覚なんですよね。
ライチ: なんだか、自分の過去や経験を、改めて丁寧に磨いて、「こんな価値があったんだね」って、一緒に味わってもらえる感じですね。
マコ: そうなんです。
だから、こういう制作の舞台裏を知ってエッセイを読むと、また味わいが深くなると思います。
ライチ: さっそくこの後、読みにいきますね。
今日は貴重なお話、ありがとうございました。
※NPO法人シングルマザーズシスターフッド 寄付キャンペーン
エッセイが読める特設ページはこちらから
「聴いてもらえる社会」を、次の世代へ
今回の対談では、「聴いてもらう」という行為が、単なる会話ではなく、
・自分に戻る時間であること
・感情の解像度を上げること
・自分らしい言葉を取り戻すこと
・人と健全につながる土台になること
そんな深い意味を持つ営みであることが、何度も語られました。
そして、大人が聴いてもらえることで、その先の子どもたちにも、「気持ちを聴いてもらえる文化」が受け渡されていく。
リスニングママ・プロジェクトが目指しているのは、まさにそんな未来です。
現在実施中の寄付キャンペーンでは、
この活動を継続するためのシステム利用料などを支えるため、39万円を目標に応援を募っています。
単発のご寄付も、マンスリーサポートも、SNSでのシェアも、大きな力になります。
未来をつくる活動に、参加していただけたら嬉しいです。寄付の詳細・ご支援はこちら
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